2/22:自転車・大東亜共栄圏
2008/02/22(Fri)17:55
◆アジア自転車乗り事情
アジアというと自転車人口が多いとイメージします。しかしそれは平地が広い中国本土が主となります。以前職場フロアにいた中国人スタッフに聞いた話ですが、特に首都北京市内にはオートバイは進入できないのでいまだに自転車天国。しかし古い自転車のほとんどがブレーキが利かないので、彼らは飛び降りて制動するのだそうです。路肩にはたいてい専用レーンがありゆうに走れますが、時より路肩走行車が後ろでクラクションを鳴らしても、彼らは絶対車に道を譲りません。
△上海街頭
△北京露地店舗
それと対照に近隣香港では自転車に乗れない人が圧倒的多数です。5年前に香港で出会った街のメッセンジャー氏に聞くと彼らさえもオートバイを併用すると言います。平地が少なく坂が多いいことが原因といいます。同じ理由で韓国・ソウルも自転車人口が少なく、需要がないのでママチャリの類は存在しません。
一大自転車生産国の台湾は街頭に高級スポーツ車は見られず、また廉価自転車よりスクーターが多く占めているようです。東南アジアでは商用の三輪自転車が多く見られます。その西方インドでは主流ホイルサイズが28インチだそうで多段ギアはないといいます。
一様にいえるのは、これからの発展国では自転車はまだ日常の交通手段で、サイクルスポーツが活性するステージには至っていないようです。
△台湾交差点
△マレーシア街頭
◆産業共生の形成
そして自転車製造の領域になりますと、極東アジアの中国・台湾・日本が生産連携トライアングルを形成しています。大衆車・スポーツ車廉価版は中国本土生産に移転し、台湾からは生産技術に関わる人たちが100万人(製造業全般)も本土に渡り従事しているそうです。台湾の2004年までの対中投資は日本を越えており、いち早く産業連携に乗り出していました。それには本来の言語・文化の共通性があるから成り立ったビジネスであります。源泉技術+パーツ供給は日本から台湾へ。大量生産技術は台湾から中国へ。こういった循環から世界の自転車需要に応じているのです。
日本の源泉技術とは製品規格にハイテク素材とその加工技術・製造機械をいいます。カーボン素材のほとんどが東レ製で、コンポメーカー・シマノの世界一の顧客は台湾ジャイアントになります。このような連携が容易だった背景にはコンポ世界規格を作ったシマノの業績が非常に大きいのです。
自転車製品とは各パーツが高度規格化されている「モジュラー生産」なのでフレームもパーツの一種のとして捉えます。製造機械も同規格なわけですから社別カスタムメイドは不要なので、無駄なコストがかかりません。それに対してメーカーごとにパーツ規格が異なる製法が自動車等の「インテグラル生産」。トヨタのシャーシには同国の日産ボディでさえも組合せができないのです。
そうして日本は高利益率の源泉技術を提供し、また高付加価値商品のパイロットライン(試作品製造)のみ残し本格的生産は海外へ。という産業構造に転換しました。
◆経営掌握と主導権遷移
いまや欧米ブランド車のほとんどが極東アジア製になり、経営自体も中華資本になっていきます。GT/SCHWINN/MONGOOSEはパシフィック社所有(親会社:カナダ玩具会社Dorel)。それに加え一時倒産危機にあったCannondaleは再建投資家所有でしたが、投資目的を達し昨月にパ社へ売却して利益確定としたようです。自国ブランド庇護より利益優先というのがアメリカビジネスなのでしょう。
そして世界初の量産MTBを作ったスペシャライズドは製造委託未払い金が払えず、そのOEM受託メリダ社に49%の株を譲渡し経営権を失いました。
なのでアメリカに設計+大量生産できる会社はもう無いのです。独自経営しているのはメジャーではTREKグループだけです。しかしそこも最近提携先NIKEと別れ、ブランド力を発揮できなくなる危惧もあります。
残る少量生産社は年間1万台に満たないフレームだけを作っていることになります。それでも設計をやっているならマシな方で、製造は丸投げというケースが通常です。なので米各社はそのブランドロイヤリティを得るためだけの商社ブローカーと化してしましました。知的所有権だけを保持し、生産を手放したら綿密なR&D(研究から製造へ)ノウハウも放棄していくことになります。ブランド信用失墜となることがあれば後がないということです。
私達日本ユーザーの利益はG8国家のうち地の利を活かし、どこよりも安く早くアジア製品を得ることができること。フレームなど根幹パーツもブランド神話に固執しなくても、製造元がしっかりしていれば品質は安定しています。購入時にどの会社で製造されたか「捷安特=ジャイアント/美利達=メリダなど」段ボールに明記しています。ですから高品質製品をきちんと見極めるのも、これからのユーザーの責任になってくると思います。
こうして自転車産業の大東亜共栄は進展し、世界的再編成はほぼ完結しているのでありました。
私から願う真の共栄とはどの国の人々もスポーツライフとして自転車を使えるように豊かになることです。同アジアの人々に着実に頑張って頂きたいと思う次第です。
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No.96|▲○Diary|Comment(3)|Trackback()
無題
2008/02/23(Sat)09:52
考えさせられるますね。
No.1|by huckysack|
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